信州大学医学部歯科口腔外科レジデント勉強会
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Department of Dentistry and Oral Surgery, Shinshu University School
of Medicine
2000.3.29 鎌田
一次止血の機序
血管の破綻により出血が起こると、血小板は速やかに膠原線維に粘着する。これは、血漿蛋白であるvon
Willebrand因子(vWF)が膠原線維に結合することで構造の変化が起こり、これによってvWFに血小板膜の糖蛋白GPIb(
GPIb/IX)が結合することによって、血小板が膠原線維に粘着する。したがって、vWFの減少や異常があると粘着は障害され出血傾向を呈し、von
Willebrand病と呼ばれる。また血小板膜のGPIb(
GPIb/IX)が欠損しても粘着は障害され、ベルナール・スーリェ(Bernard-soulier)症候群という。
さらに、この粘着の刺激によって血小板は活性化され、血小板膜糖蛋白のGPbと。aが複合体を形成する。そこにCa2+依存性に血漿蛋白のフィブリノゲンが結合して血小板間に架橋するような形で血小板凝集が起こる。このGPb/。a複合体形成に異常があるものを血小板無力症とよび、血小板数は正常であるのに出血時間は延長し、出血傾向を認める。
血小板異常による出血性素因
1血小板減少症 (血小板数10万以下)
血小板産生障害
^再生不良性貧血 _急性白血病 `悪性貧血血小板破壊亢進-免疫性
^特発性血小板減少性紫斑病(ITP)血小板消費亢進
^血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)
_播種性血管内凝固症候群(DIC)
2血小板増加症 (血小板数が40万以上を持続)
腫瘍性
^原発性血小板血症 _慢性骨髄性白血病 `真性多血症 a骨髄線維症2次性
^急性出血後 _摘脾後 `悪性腫瘍 a鉄欠乏性貧血
3血小板機能異常症
先天性
^血小板無力症 _本態性アトロンビア `血小板病症症候群 aその他:von Willebrand病後天性
^白血病 _マクログロビン血症 `多発性骨髄腫
血小板減少による臨床症状
@軽度減少(6〜8万) 打撲で紫斑
A中等度減少(3〜6万) 散発性に自然発生
B高度減少(3万以下) 汎発性紫斑および出血症状(鼻、歯肉、血尿など、消化管出血はまれ、時に脳内出血あり、関節出血はなし)脾腫、リンパ節腫脹などを認める。
歯科診療時の注意点
^血小板数2〜3万/A以上で行う
_局所に急性炎症がない時期を選ぶ
`伝達麻酔は禁忌、浸潤麻酔のみ用いる
a外科的侵襲を最小限にするように注意深く行う
b局所止血は十分に行う創傷治癒は2次的な貧血がなければ正常、一般に易感染症なし
*口腔出血時の処置法
局所止血を優先させる。全身的止血(輸血、血小板輸液等)はその後の状況によって行う。
局所止血法 ・局所用トロンビン溶液(1000〜5000単位)
・ アドレナリン溶液
・ トロンビンCMC軟膏(1g500単位含有)
・ 酸化セルロース(オキシセル)ガーゼまたは綿花
・ サージカルパック、プラスチックまたはレジン保護床
・ 局所縫合
投薬時の注意点
以下の薬剤が副作用として血小板減少症の直接的原因となるので注意する
・非ステロイド系薬剤 アスピリン、インドメタシン、
・ペニシリン系抗生剤
<参考文献>
歯界展望 「有病者の歯科治療」 医歯薬出版株式会社
臨床検査 MEDSI
高齢者歯科医療マニュアル 永末書店
最新口腔外科 医歯薬出版株式会社
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